三十を過ぎて、はじめて拳を握る

三十を過ぎて、はじめて拳を握る

畳は逃げません。

この文章は、三十代から四十代で、格闘技をやったことがない方に向けて書いています。運動部の経験もなく、ここ数年で走ったのは駅の階段だけ。そういう方です。

私はこれまで、陸上自衛隊、警察、フランス外人部隊と、三つの組織で身体を動かしてきました。そのどこでも、いちばん伸びたのは若い人ではありませんでした。伸びたのは、遅れて入ってきて、恥をかきながら続けた人です。

空手は2021年の東京オリンピックで、正式競技として実施されました。長く一部の人のものだった武道が、世界の共通言語になった年です。

もし、あなたが「今さら」と思っているなら、この先を読んでください。その「今さら」が、どこから来たのかを書きます。

今さら、と思っている方へ、もう少しだけ

今さら、と思っている方へ、もう少しだけ

言葉になっていない部分を、書き出します

言葉になっていない部分を、書き出します

鏡は正直です。

あなたが本当に困っているのは、体力ではないはずです。困っているのは、自分で決めたことを自分で守れなくなったことです。ジムの会費は引き落とされ続け、月曜に決めたことは金曜に消えている。誰にも迷惑をかけていないから、誰にも叱られません。

私にも同じ時期がありました。外人部隊を出て、身体を動かす理由がなくなった数か月です。走る距離が短くなったのではなく、走り出す日が来なくなった。あれは、体力の問題ではありませんでした。

スポーツ庁の世論調査でも、運動をしない理由の上位には「仕事や家事が忙しい」が並びます。時間が足りないのではなく、優先順位が下がっているのです。

そして、その順位を上げる方法を、たいていの人は逆から探しています。

言い当ててみます

言い当ててみます

道場について、思い違いされていること

道場について、思い違いされていること

順番が逆です。

空手は、強い人がやるものだと思われてきました。無理もありません。私たちが見てきた道場の光景は、寒稽古と、水を飲ませない指導と、拳のタコでした。あれは、限られた期間に、限られた若者を鍛えるための形です。

私が三つの組織で学んだのは、鍛えるとは追い込むことではない、ということでした。外人部隊で長く残ったのは、いちばん体力のある男ではありません。毎朝、同じ時間に同じことをできる男でした。

中学校の保健体育では、2012年度から武道が必修になりました。国が武道に見たのは、勝ち負けではなく、礼と所作を学ぶ枠のほうです。

空手の稽古は、繰り返す形があらかじめ決まっています。突き、受け、立ち方。決まっているから、迷わずに済みます。

強くなるから続くのではありません。続くから、結果として強くなるのです。

思い違いを、ひとつずつ

思い違いを、ひとつずつ

選ぶときに、本当に見るべきところ

選ぶときに、本当に見るべきところ

基準を変えます。

道場を選ぶとき、多くの方は「強くなれるか」で測ります。その基準では、三十代の未経験者はいつまでも選べません。測るべきは、週に何回、決まった時間に身体を動かす場所を持てるか、です。

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人に対して、筋力トレーニングを週2〜3回行うことが推奨されています。有酸素運動とは別枠での推奨です。自分の体重を支え、床を蹴り、腰を落とす。空手の基本稽古は、器具を使わずにこれを満たします。

私の道場が週2回の稽古を基本にしているのは、この推奨に合わせたからです。根性ではなく、公的な基準に合わせています。

続けられる形かどうか。選ぶ基準は、それだけです。

基準について、もう少し細かく

基準について、もう少し細かく

半年後に起きていること

半年後に起きていること

靴紐を結びます。

半年後のあなたは、火曜の夜、鞄に道着を入れています。会社を出る時間が決まるので、その日の仕事の組み立てが変わります。帰りの電車で汗が引いていくころ、考えているのは翌日の予定です。前の週のことは、もう頭にありません。

道場生の一人は、四十二歳で始めました。半年経って変わったのは、体重でも帯の色でもありません。日曜の夜に憂鬱にならなくなったことでした。本人は理由を説明できませんでした。

世界保健機関の身体活動ガイドラインでも、身体活動は不安や抑うつの軽減、睡眠の質の向上と関連づけられています。

畳の上で起きることは、畳の外に出ます。

半年後の、具体的な場面

半年後の、具体的な場面

手に入るものを、改めてまとめます

手に入るものを、改めてまとめます

動作は一つです

動作は一つです

無料体験稽古に申し込んでください。それだけです。

申し込むと、稽古日の候補をお伝えします。道着は不要です。動きやすい服と、タオルを持ってきてください。当日は見学ではなく、畳に上がっていただきます。立ち方と、突きを一本。それだけで、あなたの身体が今どこにいるかがわかります。

その日のうちに入門を決めていただく必要はありません。私からお声がけもしません。続けるかどうかは、身体が答えます。

今日申し込む理由は一つです。決めたことを守れなくなった、とあなたが気づいているからです。気づいている間に、身体を動かしたほうが早い。

畳は、いつでも同じ高さで待っています。

体験稽古の日について

体験稽古の日について

追伸

追伸

私は三つの組織で、命令で身体を動かしてきました。自衛隊でも、警察でも、外人部隊でも、動く理由はいつも外から与えられました。それを失ったとき、私は何もできなくなりました。数か月、部屋から出ない日が続きました。あのとき欲しかったのは、強さではありません。火曜の夜に行く場所でした。

道場を開いたのは、あのときの自分のような人が、この街にもいるはずだと思ったからです。私がやりたいのは、強い人を育てることではありません。自分で決めたことを、自分で守れる人を、この街に一人ずつ増やすことです。稽古は、そのための道具にすぎません。

あなたは、弱くなったのではありません。行く場所を、まだ見つけていないだけです。